祇王寺 ~ 悲運の白拍子たちの隠棲した草庵 ~

 奥嵯峨にある 祇王寺 は悲運の白拍子たちが隠棲したことにより、今日の寺名となったことで知られている尼寺です。法然の弟子念仏坊良鎮が開創した往生院の跡に建てられていた草庵は、江戸末期以降、荒廃していましたが、明治28年(1895)当時の京都府知事が嵯峨にあった別荘を寄進し、富岡鉄斎らが再興したといいます。現在は大覚寺の塔頭寺院となっています。『平家物語』巻一『祇王の事』の舞台となった草庵は悲話から奥嵯峨で多くの女性の拝観者で賑わう寺として知られています。

 檀林寺から楓が覆う道を進むと、樹林の生い茂る中に祇王寺の入口があり、境内にある茅葺き屋根の門をくぐると、絨毯をのせたような苔の庭が現われ、ところどころに射し込む光が苔の美しさを一層引き立てています。楓が植えられた庭には苔生した石や燈籠が置かれ、暑苦しさを感じさせる蝉しぐれまでもが心地よく感じられます。人気のない庭は静まり返り、見つめていると心なしか聞こえるはずのない白拍子の今様の声や念仏が頭の中をよぎります・・・

  祇王寺1  祇王寺2

  祇王寺3  祇王寺4
  
   祇王寺5
     竹林と楓に囲まれた夏の苔庭

  祇王寺6  祇王寺7
                       紅葉に彩られた苔の庭の光景

 平清盛の寵愛を失った白拍子・祇王が母・刀自、妹・妓女を伴ってこの地に小庵を結んで隠棲、そこに前世の無情を感じて訪れた仏御前とともに念仏三昧に日々を送るという悲話。その舞台にふさわしいつつましやかな本堂には、本尊の大日如来、清盛公、祇王、妓女、刀自、仏御前の木像が安置されています。

   祇王寺8

 本堂の奥、控えの間にある吉野窓は、斜めに交差させた格子組が、障子を閉めると光の加減でその格子が影になtって虹の色に見えることから『虹の窓』と呼ばれる風情あるもの。窓辺に座りひと時、祇王21歳、妓女19歳、仏御前17歳で仏門に入った彼女たちを偲んでいると心が痛んできます。

      祇王寺9  『虹の窓』と呼ばれる吉野窓

 境内には平清盛公の供養塔と並んで祇王・侍女・刀自の墓がたっています。平清盛に翻弄された人生を想うと虚しさを感じますが、名にも語らないお墓を見ているとそれも遠い昔の出来事であったと思えてきます。

   祇王寺10

 四季折々に風情ある姿を見せてくれる 祇王寺 何度訪れてもののあわれを感じるお寺です。

 
 

壇林寺 ~ 嵯峨天皇の皇后橘嘉智子ゆかりの寺 ~

 平安時代初期、嵯峨天皇の皇后橘嘉智子(壇林皇后)は世に類なき麗人として知られ、また仏教への信仰が篤く、嵯峨の地に 檀林寺 という国内最初の禅寺を営んだことから『檀林皇后』と呼ばれています。『檀林』とは仏教寺院における僧侶の養成機関を意味し、橘氏一族の子弟の教育のための学問所を設けたといいます。また、皇后も当時来日した中国僧・義空を師として禅書を学んだといわれています。檀林寺は盛期には塔頭12坊を数えた壮大な寺院と伝えられ、平安初期の仏教と文化の一大中心地でしたが、平安中期に廃絶し、その跡地には天龍寺が建てられたといいます。昭和39年に皇后の遺徳を偲んで、この地に再興されたのが 檀林寺 です。

 嵯峨鳥居本の町並みを南に進むと祇王寺の案内版があり、右手の苔生した築地塀に沿っていくと門が開いています。

  檀林寺1  檀林寺2

 門を入ると清められた参道と木漏れ日に包まれた庭園が広がりその先に法宝閣造りの建物が見えてきます。

   檀林寺7

   檀林寺4
     法宝閣造りの本堂

  檀林寺8  檀林寺5
    天に向かい経文を唱える瑞鳥             石燈籠            


 法宝閣造りの建物は本堂で、屋根の頂上には大きな鳥の置物が立っていますが、これは瑞鳥(めでたいことの起こる前兆とされる鳥)天に向かい経文を唱える勇姿の造形とのこと。近づいて建物を見れば軒下には『法宝閣』の大扁額が掲げられ、内陣の中央には檀林皇后を型どったといわれる准胝如意観世音菩薩、左右に達磨大師、弘法大師の像が安置されています。その右側には仏教美術史上まれに見る傑作といわれる俱利迦羅明王と自然木の火焔が置かれ、隣接する霊宝館にはゆかりの品をはじめ彫刻・工芸・絵画などが展示されています。

  檀林寺6  檀林寺3

 本堂を出て緑豊かな庭園を散策していると、色づき始めた秋海棠を見つけ、そのピンクの花色に少しだけ秋を感じました。

化野念仏寺 ~ この世のもの悲しさを語る石仏・石塔で埋められた境内 ~

 京都・奥嵯峨の『化野』と呼ばれる一帯は古来から、『鳥辺野』『蓮台野』とともに葬送の地として知られています。境内を石仏・石塔が埋める 化野念仏寺 は、弘法大師がこの地に葬られた人々を追善するために五智山如来寺として開創、その後、法然上人が念仏道場とした浄土宗の寺院です。この由緒ある寺院をことさら有名にしているのが、毎年8月23,24日の夜に行われる無縁仏の霊にローソクをお供えする『千灯供養』 その幻想的な光景は嵯峨の夏の風物詩になっています。

 愛宕神社一之鳥居の門前にある嵯峨鳥居本の町並みを歩いていくと、『五山の送り火』のこの日、通りの一角では鳥居形の送り火に奉納する護摩木に願い事を書いている地元の人や観光客の姿が・・・

   化野念仏寺1 
     嵯峨鳥居本伝統的建造物保存地区 

  化野念仏寺2  化野念仏寺13
    奉納される護摩木受付所               五山の送り火 鳥居形

 町並みの中程、苔生した石垣があり、その入口にはあだし野の石柱がたっています。緑の苔と木漏れ日が揺れるゆるやかな石段、サルスベリの花びらが散る参道は真夏の暑さを忘れさせてくれます。足を踏み入れた境内の入り口近く、絨毯を敷き詰めたような苔の上には石仏がまばらに置かれ、塀に沿うように無数の石仏が並んでいます。

  化野念仏寺3  阿d氏の念仏寺4

  化野念仏寺5  化野念仏寺6 
                                   仏舎利塔(納骨堂)

 整然と石仏・石塔が並べられた『西院の河原』 この境内には8000体を数える石仏・石塔が祀られていますが、これらの石仏・石塔はあだし野の山野に散乱埋没していたものを明治時代に地元の人々が、極楽浄土で阿弥陀仏を聴く人々になぞられて配列されたものといいます。

   化野念仏寺7

  化野念仏寺8  化野念仏寺9

 室町時代のものが多いといわれる石仏・石塔、何百年という歳月により何時しか無縁仏となり、野の片隅に埋もれたもの、うち捨てられたもの・・・この世のもの悲しさが胸をよぎります。

 境内には湛慶作といわれる阿弥陀如来像が安置された本堂、庫裏、地蔵堂、萱葺の水子地蔵堂などの建物が建っています。

  化野念仏寺11  化野念仏寺10
    本堂                            地蔵堂

                 化野念仏寺12  水子地蔵 

 水子地蔵のお堂の先の『竹の小径』は、大きな竹が天を覆うようにのびていて、光のさえぎられた小径は無の世界に誘ってくれるような気持ちに・・・そして小径を上った先には広々とした青空はひろがり六面体地蔵が待っていてくれました。

  化野念仏寺14  化野念仏寺15
    竹の小径                         六面体地蔵

 石仏・石塔が織りなす 化野念仏寺 の風景は何度目にしても無常に心が震えます。
 いつかローソクが灯された幻想的な光と闇のなかでこの石仏たちに手を合わせられる日が来ることを願いながら境内を後にしました。

竹生島 ~ 琵琶湖に浮かぶ神の住む島 ~

 『琵琶湖八景』のひとつ 竹生島 は琵琶湖北部の沖合いに浮かぶ周囲約2㌔の小島。神代の昔、伊吹山の神・多多美比古命が姪である浅井岳の神・浅井姫命と高さを競い合い、負けた多多美比古命が怒って浅井姫命の首を切り落とすと、その首が琵琶湖に落ちて生まれた島といわれ、それがあらぬか、竹生島は昔から『神の住む島』と敬われてきました。島には弁財天を祀る宝厳寺 と浅井姫命を祀る 都久夫須麻神社(竹生島明神) があり、行基の開基とされる宝厳寺の本尊・弁才天は宮島、江ノ島とともに『日本三弁才天』のひとつとして知られています。

 『琵琶湖八景 深緑・竹生島の沈影』に数えられている島は深い緑に覆われ、さざ波の湖面にぽつんとその印象的な姿を映しています。

   竹生島1

 船着場に降り立つと数軒の土産物店、本坊などの建物の先に『祈りの階段』と呼ばれる石段が続き、165段の石段を上りきると 宝厳寺 の境内に。入口に立つ、四方に四仏が配された五重石塔は鎌倉時代作といわれ、比叡山中から採掘された小松石で造られた日本に7つしかない重要文化財のひとつです。弁才天が祀られている本堂は昭和に建造されていますが、平安後期の様式を基本に造られており、その姿は降り立った鳳凰を思わせ、背後の緑とあいまって美しい風景を描き出しています。

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  竹生島4  竹生島5
    宝厳寺本堂                       三重塔

 弁才天には琵琶が付き物ですが、この宝厳寺にもいくつかの話が伝わっており、そのひとつが『平家物語』の平経正の『竹生島詣』です。 木曽義仲追討のため北国路に兵を進めていた経正が、戦勝祈願のため竹生島に立ち寄り祈願ののち、琵琶を奏でると、湖中から明神が白龍になって現われ、感激した経正は、戦勝疑いなしと喜び島を後にしたというもので、その逸話は謡曲の題材ともなり、芸能の神として崇められるようになったといいます。境内にはほかに三重塔、雨宝堂、宝物館などの建物が建ち、また境内から見下ろす雄大な風景は感動です。

 琵琶湖の眺望を楽しみながら石段を下りると観音堂が建っています。弘法大師が真言密教の秘法を納めたと伝わる観音堂の堂塔は豊臣秀頼が復興し、入口に立つ国宝の唐門は豊国廟の正門だったといいます。

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    観音堂                          国宝の唐門

 唐門から『船廊下』と呼ばれる渡り廊下をいくと 都久夫須麻神社 の本殿があります。船廊下の名はは秀吉の朝鮮出兵たおりに御座船として造られた船を利用して造られたことからその名が付いたといいます。

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    船を利用した船廊下                  廊下の下は崖造り                                          
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     国宝の都久夫須麻本殿

 舞台造りの建物は伏見桃山城または豊国廟から移築したと伝わっており、その豪華絢爛たる内部は圧巻です。そして、拝殿の前には龍神拝所があり、その下の岩場にある鳥居にかわらけを投げ、それが鳥居をくぐれば願いが叶うといわれ、鳥居の下は願いの込められたかわらけが一面に・・・

  竹生島11  竹生島12

 行基が弁財天を刻み、堂を建立したことがはじまりと伝わる『竹生島信仰』 明治時代の神仏分離令で宝厳寺を廃寺にして神社とするよう命じられたにもかかわらず、日本全国の崇敬者の強い要望により廃寺をまぬがれ、寺院と神社が境界を設けて両方が並存することになったといいます。

 神と仏一体の『信仰の島・竹生島』 また、その大きなパワーを授かりに行きたいと思います。

                                    

白鬚神社 ~ 湖中大鳥居で知られる近江最古の大社 ~

 水中に浮かぶ鳥居といえば世界遺産にもなっている宮島の厳島神社が有名ですが、滋賀県高島市にある 白鬚神社(しらひげじんじゃ) も『近江の厳島』として親しまれる湖中に立つ朱塗りの大鳥居が有名な神社です。由緒によれば、白鬚神社は垂仁天皇の皇女倭姫命が猿田彦命を祭神に創建した近江最古の神社とされ、日本全国に約300の分霊社が祀られているといいます。祭神の猿田彦命は天孫降臨の際、瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)の道案内をされた神で、『道開きの神』として知られていますが、この白鬚神社で祀られている猿田彦命は白髪で白い鬚を蓄えた老人の姿で、『延命長寿の神』としても信仰を集めています。また、その縁起は謡曲『白鬚』でも謡われています。

 琵琶湖西岸、琵琶湖を代表する景観にもなっている湖中の大鳥居。案内によれば、神社前の湖中に鳥居があったという伝説や絵画から、昭和12年(1937)に復興寄進され、昭和56年(1981)に再建されたものといいます。足元に寄せる波を受けながら、湖中から社を見守る鳥居に逞しさを感じます。

   白髭神社1
     琵琶湖を代表する景観になっている湖中大鳥居

 社殿は国道と湖中大鳥居をはさんで向かい側にあり、風格のある入母屋造り檜皮葺の本殿は慶長8年(1603)に豊臣秀頼と淀君が寄進したものといい、国の重要文化財になっています。

  白髭神社2  白髭神社3
                                   拝殿

   白髭神社4
    本殿・絵馬殿

  白髭神社6  白髭神社7
    皇大神宮                         豊受大神宮

  白髭神社5  白髭神社8
    若宮神社                         八幡・加茂・高良神社

   白髭神社9

 また、白鬚神社には多くの著名人が参拝し句や歌を残しており、境内にはいくつかの句碑や歌碑が立っています。

 白髭神社12  白髭神社10
   松尾芭蕉の句碑                    与謝野鉄幹・晶子夫妻の歌碑

     松尾芭蕉の句
       四方より 花吹入れて 鳰の湖

     与謝野夫妻の歌
       しらひげの 神のみまへに わくいづみ これをむすべば ひとの清まる  
     

          白髭神社11  紫式部の歌碑

      紫式部の歌
        みおの海に 綱引く民の てまもなく 立ちゐにつけて 都恋しも

 延命長寿・縁結び・子授け・・・・人の世の総ての導きの神として信仰を集める近江最古の神社 白鬚神社 境内にはお宮参りの家族、『ビワイチ(びわ湖一周サイクリング)』を楽しむ若者などに混じってアジア系の観光者も訪れ参拝している姿が。帰りがけ再び湖中の大鳥居を眺め、今度は早朝に対岸の山の間からのぼる朝日を浴びた鳥居を見てみたいと・・・叶えられそうな期待を胸に境内を後にしました。
 
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