2017 桜紀行 4 ~ 洛中に咲く桜を巡る ~

 若かりし頃、「澄んだ青空に紅葉で染まった秋が好き」という私に、年配の知人が「紅葉は美しいけど空気の澄んだ秋は寂しくて、歳を重ねると日増しに暖かさを感じる春の方が好きになるわよ」と話していたことが、近年懐かしく思い出され、桜の便りが届く頃になるとあちこちの桜が気になりはじめます。桜の名所の多い京都、観光的な桜で知られるところは何処も彼処も多くの人で賑わい、ゆっくりと気の向くままに桜を鑑賞することがなかなか叶いませんが、京都市街を南北に走る堀川通から寺之内通を東に入った小川通が交わるあたりは、昔から『百々の辻』と呼ばれていた場所で、平安末期の頃は京都市街の北限であったこのあたりは今も静かな佇まいが残り、寺社の門前や堂宇の片隅に、そして民家の庭でひっそりと咲く桜を見ることができます。

 茶道の両千家の茶室、不審庵・今日庵が並ぶ、しっとりと落ち着きある風情が漂う小川通にある日蓮宗の本山 本法寺 の桜もそのひとつ。日親が開創したこの寺は秘伝の刀剣研磨で一族が繁栄した本阿弥家の菩提寺で、書院には本阿弥が光悦作といわれる『三巴の庭』があることで知られている境内が桜に包まれた風景の美しさは格別です。

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     桜の中にそびえる本法寺の相輪

 雨上がり、参道に舞い落ちた花びらを踏みしめながら本堂に向かうと多宝塔の満開の桜の上に相輪をそびえる姿はなんとも幻想的・・・人影がとぎれた参道を振り返れば桜の中に仁王門が霞む趣きある風景がありました。

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 ひと時境内を散策し、小川通を北に向かい上御霊前通を東に進むと 妙覚寺 があります。妙覚寺は日実が小野妙覚という人物の外護をえて、四条大宮にあった妙覚の別荘を寺として創建し、その後中京区あたりに移り、織田信長の上洛時の宿舎であったことから本能寺の変で焼失し、秀吉の命によって現在の地に再建されたといいます。妙覚寺は絵師・狩野家の菩提寺で狩野元信らの墓もあります。山門前に植えられたしだれ桜、風に揺れる風情ある景色に思わず見とれてしまいます。

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    妙覚寺の山門と桜

 京へ入る『京の七口』のひとつ鞍馬口、烏丸通から鞍馬口通を東に行くと左手黄檗宗の禅寺 閑臥庵(かんがあん) があります。もとは梶井常修院の宮の院邸で、後水尾法皇が王城鎮護のため貴船の奥の院より鎮宅霊符神を勧請し、隠元禅師の弟子・千保禅師が開山となってお寺のし、自ら『閑臥庵』と命名して宸筆の額を掲げたといいます。そして、春に秋に和歌を詠み、庭を愛でた法皇が植えた桜、曙桜に因んで 曙寺 とも呼ばれています。

 通りに面して建つ龍宮門を入ると羅漢像が並ぶ庭を前に北辰鎮宅霊符神が祀られている鎮宅堂があります。

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    閑臥庵山門                    

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                                   鎮宅堂 

 鎮宅とは家屋の安全・招福を祈ること、霊符は呪力のある御札のことを意味し、祀られている北辰鎮宅霊符神は、十干十二支九星を司る総守護神で、陰陽道の最高の神とされ、平安中期に安倍晴明が開眼と伝わっているそうです。鎮宅堂の脇を入ると本堂に向かって参道が伸び、苔に覆われた庭園に桜や木瓜など春の花が彩りを添えています。この閑臥庵ではこの趣きある庭園を見ながら後水尾法皇が好んだといわれる精進料理『普茶料理』を頂くことができます。

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     本堂前に広がる庭園

 釈迦如来坐像が安置された本堂では後水尾天皇ゆかりの品、伊藤若冲の版木などの寺宝と鮮やかな砂曼荼羅を観覧することができます。

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     本堂

 静寂な境内をあとに、寺町通を下り京都御苑へ。
 京都御苑にはしだれ桜、山桜など800本もの桜が植えられています。中でも近衛邸跡の広場に咲くしだれ桜のことのほか美しく、圧巻 言葉は要りません。

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 四季折々の花に彩られる京都御苑は『花の御所』、桜を巡りながらの散策は春爛漫の花の苑からの最高の贈り物・・・その贈り物に、知人の「春が好き』が少しだけ近づいてような気がしてきました。

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