岩間寺 ~ 滋賀と京都の県境にたつ芭蕉ゆかりの寺  ~ 

 滋賀県大津市と京都府宇治市の県境に位置する 岩間山正法寺 は、 通称 岩間寺 の名で親しまれる『西国三十三カ所』のひとつです。縁起によれば、養老6年(722) 元正天皇の病気平癒に功のあった泰澄大師が、加賀白山を開く途上、霊地を求めここを訪れた折に、山中の桂の大樹から千手阿羅尼を感得し、その桂の木で等身の千手観音像を刻み、その胎内に元正天皇の念持仏を納め本尊としたことがはじまりとのこと。かつては熊野、吉野と並ぶ日本三大霊場のひとつとして栄えたといいます。

 岩間山中腹にある寺は、瀬田川沿いに広がる住宅地を抜け、曲がりくねった山道は上へ上へと続いて、やがて生い茂った木々の間から光が射しこんだ駐車場に到着しました。そしてその境内で最初にであった『ぼけ封じ』の観音さま。

   岩間寺2

 この岩間寺は『西国三十三カ所』であるとともに『ぼけ封じ近畿十樂観音霊場』で知られています。

   岩間寺1  

 山門のない岩間寺、本堂に続く参道の入口では二体の仁王像が出迎えてくれます。木立に囲まれた境内は静寂に包まれ、暑さをを忘れさせてくれる涼やかな空気が漂い、その心地よさに思わず深呼吸  大師堂を過ぎると目の前には稲妻龍王社があり、その後ろには『火伏の銀杏』がそびえています。

  岩間寺3  岩間寺4
    大師堂                          稲妻龍王社と火伏の銀杏  

 そして泰澄大師が本尊を刻んだ後の切株から再び芽生たといわれる霊木・桂の木を前に本堂が建っています。ここに祀られている本尊は毎夜日没とともに厨子を抜け出し、百三十六地獄をかけめぐって人々を救済し、日の出の頃、岩間寺に戻ってきたときには汗びっしょりになっていることから『汗かき観音』と呼ばれているそうです。

   岩間寺6
     本堂

  岩間寺5  岩間寺9
    霊木の夫婦桂                      不動堂

 本堂と不動堂の間に小さな池があります。この池は、松尾芭蕉の句の中で最も知られている
   
      古池や蛙飛びこむ水の音

 の句が詠まれた池といわれています。松尾芭蕉はこの岩間寺に参籠して本尊の霊験を得、その誹風を確立したと伝えられていることから、この古池は『芭蕉の池』と呼ばれています。俳句の心得はありませんが、この池を見ていると句が詠めそうな気に・・・

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     芭蕉の池

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    『古池や蛙飛びこむ水の音』の句碑          日本一の長寿桂

 本堂を少し西に行くと八大龍王堂があり、その背後の山の斜面には桂の大樹群が広がっています。日本一といわれる桂は推定500年とか、その大きさに圧倒されます。風にさらさらと葉を揺らす桂の巨木、谷間から静寂を破って響く鶯の声、降り注ぐ夏の太陽、吹き抜ける風がほほをかすめていく心地よさ・・・時間を忘れていつまでもその場所にたたずみ、森林浴をたっぷり頂いた体で、足取りも軽くお寺を後にしました。
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神童寺 ~ 北吉野山の別名を持つ古刹 ~

 京都・南山城の渓谷を縫いつつ西に流れる 木津川 は古くは『泉川山背川』と呼ばれ、早くから舟運の交通の要所であり、『木津』はその港のあったところといいます。津は港をさす言葉で、伊賀や甲賀で伐りだされた木材はここで陸揚げされたことから『木の港』、木津 と呼ばれるようになったといいます。その川筋には多くの仏像や石仏を安置した寺院が点在しています。

 国道24号線にかかる泉大橋のほとり、泉橋寺 の境内にある露座の地蔵仏は日本一大きな石地蔵として知られています。泉橋寺は奈良時代の高僧・行基が建てた四十九院のひとつで、木津川に架かる泉大橋の守護・管理のために建立されたといいます。 門前に鎮座する地蔵石仏は鎌倉時代に作られたもので、応仁の乱で地蔵堂が焼かれて、それ以来露座のまになっているそうです。

  神童寺11  神童寺12

 青空の下に鎮座する石のお地蔵さん、鎮座する足下を囲むように並べられた石仏に人々の願いが込められているようにも感じられます。

 泉橋寺から上狛の集落を過ぎ山手の方に上がっていくと 神童寺 があります。神童寺は聖徳太子が自ら千手観音を刻して創建、白鳳4年(676)に役行者がここを訪れたおり、子守・勝手明神が童子に化身して役行者が蔵王権現像を彫ることを助け、役行者はその完成した像を安置して『神童寺』と称したと伝えられています。

 細い集落の道を行くと、高く積まれた石垣の上にお寺の山門が見えてきます。

   神童寺1 

 石段を上り、山門をくぐると端然とした前庭の先に本堂が建っています。

  神童寺2  神童寺3

   神童寺4

 こ本尊が修験道の主尊蔵王権現であることから蔵王堂とも呼ばれる本堂には、厳めしく躍動感あふれる蔵王権現が安置されていてその迫力に圧倒されました。本堂の横には十三重石塔があり、その脇から夏草が生い茂る道は桜とミツバツツジが植栽されていて、その間にアジサイなどの夏の花が咲いています。

  神童寺5  神童寺7

 
  神童寺6  神童寺8  

  やがて開けた地にでるとそこには鐘楼、収蔵庫が建っています。

  神童寺9  神童寺10

 収蔵庫には日光・月光菩薩、愛染明王、毘沙門天など平安時代のものといわれる多くの仏像が安置されています。どの仏像も重要文化財級のものですが、中でも弓を額にかざした愛染明像は初めて目にするものでした。

 高台から本堂の屋根越しに下を見下ろせば、一本の道の両側には民家が軒を並べるのどかな里が広がり、その風景は懐かしくて、郷愁を誘います。北吉野山の別名を持っている 神童寺 境内を桜が覆う春にもう一度訪ねてみたいと・・・お寺を後にしました。

当尾の里 ~ 岩船寺から浄瑠璃寺へ 石仏の道を歩いて ~

 京都の最南端、奈良県との県境に広がる 当尾 (とうの)は、かつて尾根伝いに寺院やその塔頭・子院などがあり、多くの堂搭が並んでいたことから『搭尾』、のち『当尾』の字があてられたといいます。その当尾には修行僧が隠れ住んだときに作ったと伝えられる多くの石仏や石塔が残されています。今も路傍にひっそりと佇む石仏を訪ねて岩船寺から浄瑠璃寺までの道を歩いてみました。

 岩船寺の山門を出て最初に出会った石仏が、薄暗い谷底の崖に刻まれた『不動明王』の磨崖仏。この磨崖仏は一願不動として信仰されているといわれています。磨崖仏を拝み、鶯の声を聴きながら木漏れ日の道を進むと草むらに座る『眠り仏』と当尾で一番人気を集めている『わらい仏』が迎えてくれました。

  当尾1  当尾7 
                                   眠り仏

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     わらい仏

 『眠り仏』は長い間、土の中に眠っていてことからこの名がついたとか、案内には『やすらかにおやすみください』の言葉が添えられていました。阿弥陀三尊が彫られた『わらい仏』、その中央の阿弥陀さまの柔和な笑顔は旅ゆく人を優しく見守ってくれているようにも思えます。その微笑みに見送られて10分ほど歩くと、からすの壺と呼ばれる辻にでました。その角には真ん中に穴の開いた『唐臼の壺」とよばれる石があり、近くには岩の二面に阿弥陀如来、地蔵菩薩が彫られた、『からすの壺二尊』と呼ばれる磨崖仏が。正面に彫られた阿弥陀如来の右寄りには灯籠が線刻され、火袋だけ彫りくぼめれ、実際に灯明が供えらるようになっていました。

  当尾4  当尾5
    阿弥陀如来坐像                    地蔵菩薩立像

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    唐臼の壺                         あたご灯籠

 からすの壺の辻からしばらく行くと『あたご灯籠』、その先に『藪の中の三尊』があり、『あたご灯籠』は愛宕神社への献灯籠といい、また『藪の中の三尊』には地蔵菩薩を中央に、右に観世音菩薩、左に阿弥陀如来の三体が刻まれています。

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     藪の中の三尊

 岩船寺から浄瑠璃手までの道に残された石仏、これらの石仏は黙して語ることはありませんが、見る人にとってはそれぞれの姿や表情からそれぞれの思いを抱かせてくれます。それらの石仏と対話できる石仏の道、いにしえ人の心を汲みとりにまた訪ねて来たいと思います。

浄瑠璃寺 ~  西方浄土への願いを込めた九体阿弥陀如来のおわす寺 ~

 京都の最南端、奈良県との県境に広がる丘陵台地当尾に、浄土信仰の全盛期のままに境内中央に池を掘り、西に九体阿弥陀坐像を安置した本堂、東に薬師如来像を安置した三重塔から形成された 浄瑠璃寺 があります。創建については奈良時代に聖武天皇の勅願による行基の開基とも、また平安時代に當麻寺の義明上人が薬師如来を安置して開基したとも伝えられていますが明確ではないようです。

 数軒の土産物店が並ぶ細い参道の両側には馬酔木が枝をのばし、その間から今が盛りのアジサイが顔をのぞかせています。

  浄瑠璃寺1  浄瑠璃寺3
     馬酔木に囲まれた参道

 のどかな参道は梅雨の晴れ間の太陽が降り注ぎ、時折聞こえてくる鶯の声が足取りを軽くさせてくれます・・・そして簡素な山門をくぐると目の前には広々とした池が広がっています。

  浄瑠璃寺4  浄瑠璃寺5

 阿字池と呼ばれる池の真ん中の島には弁才天が祀られ、池の西側に阿弥陀堂(本堂)、東側に三重塔が対峙するように建っていて、西を彼岸(涅槃の世界)、東を此岸(迷いの世界)としている平安時代の阿弥陀浄土信仰の様式を日本で唯一残された配置といいます。

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     彼岸

   浄瑠璃寺7
     此岸

 そして本堂には九体の阿弥陀如来座像が安置されています。この九体は九品往生をあらわし、極楽浄土におもむくものには下品(下生、中生、上生)、中品(下生、中生、上生)、上品(下生、中生、上生)までの九段階の位があることを九の如来像でしめしたものといいます。九体を安置する阿弥陀堂は日の没する西方浄土へ迎えてくれる阿弥陀仏を西に向かって拝めるように東向きに建っていて、その対岸から彼岸に来迎仏を拝まれるようになっています。また堂内には四天王像、子安地蔵菩薩などのほか当尾の美女とも呼ばれる秘仏・吉祥天女像も安置されています。

  浄瑠璃寺11  浄瑠璃寺9
    阿弥陀堂(本堂)                    三重塔

 そして薬師如来が安置されている三重塔は東岸から石段を上ったところに建ち、その気品ある美しい朱色の姿を池に映しています。この塔は平安末に京都一条大宮から移されてきたとのこと。三重塔を背に池越しに阿弥陀堂におわす阿弥陀仏に手を合わす・・・それだけで浄土に導かれていけるような気がしてきます。そして安らいだ気持ちで池の周囲を廻れば山野草や青もみじがより一層心を癒やしてくれました。

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 我が国が誇る仏像の宝庫・浄瑠璃寺は『関西花の寺霊場』の札所でもあり、春に参道を埋め尽くすように咲く馬酔木が知られています。浄土庭園を望みながら静かに坐する浄瑠璃寺の仏様、季節をかえてまた逢いに来たいと思います。

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岩船寺 ~ 文化遺産を残す加茂のあじさい寺 ~

 梅雨時、庭先や公園をパステルカラーの優しい色合いで明るくしてくれるアジサイ。日本生まれのその花は春の桜、秋の萩のように一年の花暦には欠かせないもののひとつです。そのためか『あじさい寺』の異名を寺社は各地にあり、その風物詩を求めて多くの人が訪れます。京都府木津川市加茂町にある 岩船寺 もそのひとつ。京都府の南端、奈良県と境を接するこの地は『当尾(とうの)』と呼ばれ、石仏や磨崖仏が数多く点在し、かつては興福寺や東大寺の僧の隠棲の地として瞑想や思索の聖地として栄えたといいます。

 寺伝によれば、岩船寺 は天平元年(729)聖武天皇の出雲行幸に際して、霊夢があり、大和国鳴川の善根寺に籠居していた僧行基に勅して阿弥陀堂を建立したのがはじまりで、当尾を霊場とする修験者にとって寺はその一拠点となり、寺の鎮守社として白山神を勧請したといいます。その後、弘法大師と姉の子の智泉大師が灌頂堂と報恩院を建立、さらに嵯峨天皇皇后の橘美智子が智泉大師に帰依し、皇子が誕生した功により堂塔伽藍が整備され 岩船寺 と号したとのこと。最盛期には塔頭が39坊を有した壮大な寺も、鎌倉時代以降の兵火により大半を消失し、寛永年間に徳川家康、秀忠らの寄進により堂塔、仏像の修復が行われたといいます。

 当尾の山間に位置する岩船寺、木々に覆われた石段を見上げればその先に山門が木漏れ日の中にたっています。石段のそばにはかつて修行僧が身を清めるための使われたという石風呂が置かれ、その昔がが偲ばれます。

  岩船寺2  岩船寺1
    山門                            石風呂

 石段を上った門からはピンク、青、白色のアジサイに彩られた境内が広がり、その先の樹木に包まれて鮮やかな朱塗りの三重塔が圧倒的な存在感でそびえたち、その手前には隠れるように十三重石塔がたっています。

   岩船寺3

 門を入り参道の脇のアジサイをぬう様に進むと、左手に石室不動明王立像、厄除け地蔵菩薩、五輪塔がたっています。石室不動明王立像は角石柱を立て、その上に寄棟造りの一枚石の屋根をかけた珍しい石室の奥深く一枚石に刻まれていましたが、長い歳月に表面の彫はややかすれているように見えました。その横に安置されている厄除け地蔵菩薩は毎年3月、最初の午の日に護摩供養が行われているそうです。

  岩船寺4  岩船寺5
    石室不動明王立像                   厄除け地蔵菩薩

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    五輪塔                           十三重石塔

 行基作と伝わる阿弥陀如来像は四天王像に左右を守られて本堂の中心に安置されています。あまり広くない本堂でケヤキの一本造りの丸みをおびた阿弥陀如来像を見ていると阿弥陀さまに抱かれているような安心感で心が満たされ、いつまでもそこに座っていたいような気持になってきます・・・静寂な境内に時折耳にする鶯の鳴き声、風情ある境内を色とりどるアジサイを眺めながら三重塔へ。

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     色とりどりのアジサイが美しい境内

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    本堂                            三重塔

 三重塔が建つ高台から見下ろす先に広がる阿字池には、アジサイに負けじとスイレンが淡い色合いの花ををのぞかせ、池を取り囲むように季節の草花や花木が枝を広げています。そして振り返り、三重塔をまじかで見れば、四隅には垂木を支える木彫の邪鬼の顔が  そのユーモラスナ顔に思わず笑みがこぼれました。

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      三重塔前から見た阿字池と本堂

 落ち着いた佇まいの境内には他に開山堂、鐘楼、歓喜天堂などがひっそりと木々に囲まれて建っています。また、岩船寺の背後の山中に岩船寺伽藍守護として建立された白山神社があり、現在はこの地の産土神として祀られています。

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    開山堂                           鐘楼

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    歓喜天堂                         白山神社

 岩船寺のアジサイは境内を埋め尽くすのではなく、自然の樹木の中にとけ込む様に植えられているためか、緑に映えて美しく、ところどころに見え隠れする堂塔がなんとも趣き深く、心に残る風景を刻みます。『アジサイ寺』で知られる岩船寺は『関西花の寺二十五カ所霊場』の札所のひとつでもあり、様々な花が織りなす美しい風景をみせてくれます。数多くの文化遺産を残す 岩船寺 は四季折々に訪ねたい寺院のひとつです。
 
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