奥石神社 ~ 歌枕で知られる老蘇森にたたずむ古社 ~

 滋賀県近江八幡市安土町東老蘇の国道8号線沿いから見える鬱蒼と生い茂る森は、古来より 老蘇森(おいそのもり) と呼ばれ、万葉の時代から繰り返し讃えられた歌の名所。伝説によれば、この一帯は地裂けて水が湧き、人の住めるところではなかったが、石部大連という翁が樹を植えて、神々に祈願したところ、たちまち大森林となり、この大連が百数十歳まで歳を重ねたことから『老蘇森』と称せられたといいます。今も杉や檜、松などが生い茂るその老蘇森の中に 天津児屋根命を祭神とする 奥石神社(おいそじんじゃ) の社があります。この社は中世、近江守護としてこの地を支配した六角氏の居城があった繖山(観音寺山)をご神体として遥拝する祭祀場だあったといわれています。その奥石神社は『鎌宮(かまみや)』とも呼ばれていますが、これは『蒲生野宮(がもうのみや)』が訛ったものと考えられているそうです。

 中山道に面してたつ鳥居からは巨木の連なる表参道が、寂静な空気に包まれて真っすぐに伸びています。

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    中山道の面した表参道の鳥居            巨木に覆われた参道

 初秋の風が吹き抜け、漂う森の香りが漂う参道・・・いにしえ人がもてはやした意味がなんとなく分かるような気がしてきました。

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    参道のある吉住大明神                 静まり返る森

 境内に入ると深緑の樹木を背に社が建っています。

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    境内                            拝殿

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     本殿

 拝殿の奥に本殿、諏訪神社本殿が並び、本殿は織田信長が再建させたと伝わり、安土桃山時代の華麗な装飾がほどこされた神社建築になっているそうです。

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    豪華で優美さが漂う本殿                諏訪神社本殿

 古代から知られる老蘇森、その中にひっそりとたたずむ奥石神社、どこか神秘的な思いがする神社でした。   

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太郎坊宮 ~ 太郎坊天狗が守護する勝利と幸福を授ける神社 ~

 滋賀県東近江市の赤神山の中腹にある 太郎坊宮 は『勝運授福』『厄除開運』の神として信仰を集める神社で、正式名を 阿賀神社 といい、創建は約1400年前と伝えられています。そもそも太郎坊とはこの社を守護する天狗のこと。京都鞍馬に住む次郎坊天狗の兄で、この赤神山で修行をしながらご祭神の『正哉吾勝勝速日天忍穂耳尊(まさかあかつかちはやひあめのおしほみみのみこと)』を守っていたといい、通称名の 太郎坊宮 が世間では有名になったいいます。

 巨大な岩石を露出した赤神山の麓にある伝教大師最澄が創建してと伝わる 成願寺 の境内にある参道から石段を上り太郎坊宮へ。

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    成願寺                           太郎坊参道

 祈祷所のある広場でひと休みして本殿を目指します。願掛け天狗が迎えてくれる入口の先には絵馬殿があり、そこから蝉しぐれの表参道(男坂)をのぼっていくと、仰ぎ見るような岩石の上にいくつもの建物があり、やがて拝殿が見えてきます。

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    願掛け天狗                        絵馬殿
  
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    拝殿                            表参道

 拝殿からさらに石段を上ると愛宕社、稲荷社の社が並び、その横には源義経が鞍馬山を下りて、奥州に向かう途次、この山に登り源氏再興を祈願したという故事があり、その時休息してと伝わる『源義経 腰掛岩』があります。

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    源義経 腰掛岩                     夫婦岩

 そして、その岩の前には『夫婦岩』と呼ばれる巨大な二つの岩がそびえ立っています。別名『近江の高天原』とも称される巨岩は、その昔大神の神力を以って左右に押し開き造られたと伝えられており、幅約80㌢の隙間を悪心のある者が通ると岩にはさまれるという伝承もあるだけに、岩の間を通り抜けるときは身も心も引き締まり、霊感を覚えるような神秘的な気持ちに・・・夫婦岩を通り抜けると眼下には取り入れが終わった蒲生野の初秋の風景が広がっていました。  

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 本殿はその上の境内の中で最も高いところに建てられています。

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 本殿に参拝したのちは寿老人や弁財天の石像が並ぶ裏参道(女坂)を下ってい行きます。

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    裏参道                           弁才天

 心地よい初秋のかげに身を任せ、石段を下りていくと、入口にたくさんの絵馬がかけられた一願成就社が建っています。。この社は参拝者が自ら願掛け神事を行うところで、社の脇にはお百度参りに願掛け道があり、石に願いを書き納める石塚があります。また道の途中には天狗や役の行者の象も祀られています。

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    一願成就社                        天狗象 

 また、願掛け道からは遥かかなたに比叡山を望む風景も。

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 山の中腹に境内を構える太郎坊宮、御神徳を得られることはもちろん、参道の至るところで出会う巨石や怪石、眼下に広がる四季折々の田園風景、遥かかなたの山の眺望と魅力あふれる神社です。

近江神宮 ~ 天智天皇ゆかりの『かるた』の聖地 ~

 滋賀県大津市にある 近江神宮 は大津宮を営んだ天智天皇ゆかりの地に、皇紀2600年を記念して昭和15年(1940)に建立された神社。 祭神の天智天皇は日本で初めて漏刻(水時計)を造り時刻制度を定めといわれていることに因み、毎年6月10日に『漏刻祭』が行われ、また、『小倉百人一首』の第一首目の歌を詠んだことに因み、競技かるたの大会が開催さることでも知られています。時の記念日を前に久しぶりに近江神宮を訪ねてみました。

 道路に面した一の鳥居から高い樹木に囲まれた参道を行くと二の鳥居、その石段を上ると鮮やかな朱塗りの楼門がそびえています。

  近江神宮1  近江神宮2

 楼門を入ると正面の外拝殿が参詣者を迎えてくれます。近江神宮の社殿は『近江造』と呼ばれる近代神社建築の代表的なもので、山麓の斜面に本殿・内外拝殿を回廊が取り囲む独特な造りをしています。 近江神宮は、大化の改新を断行し日本の運命開拓の神、時の祖神を祭神としていることから、開運・学問などの信仰を集めています。

  近江神宮3  近江神宮4
    外拝殿                           内拝殿

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      本殿と内拝殿 

 そして、競技かるた名人位、クイーン位決定戦はこの境内にある神楽殿で行われています。 
 
 近江神宮6  近江神宮7
    神楽殿                          百人一首の歌が掲げられた回廊

 また、境内には漏刻(水時計)、古代式火時計、日時計が置かれ、時計館宝物館内には和時計や日本最古の懐中時計などの貴重な時計も展示されていました。

  近江神宮8  近江神宮9
    漏刻(水時計)                      古代式火時計

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                              日時計

              近江神宮12
                 時計館宝物館

 日本の長い歴史の中にあってあまりにも短かった大津京、その跡地といわれる場所に建つ近江神宮は今、映画『ちはやぶる』の舞台となって脚光を浴びているようです。境内に並んでいる歌碑や句碑を見ながら、百人一首をまたひも解いてみたいと思いました。

唐崎神社 ~日吉大社西本宮の鎮座にかかわる古社 ~

 琵琶湖西岸の大津市唐崎にある 唐崎神社 は山王総本宮の 日吉大社 の摂社のひとつです。 ご由諸によれば、日吉大社で代々神職を務められた琴御館宇志丸宿禰がこの地に居住し『唐崎』と名付け、天智天皇が奈良の三輪山から大己貴神を勧請された際、琵琶湖を渡り、この唐崎の地に降り立ち、日吉大社の西本宮に祀られたといわれています。神社のご祭神は琴御館志丸宿禰の妻・女別当命、創建は持統天皇の御代と伝えられています。そして境内にある有名な『唐崎の松』は志丸宿禰が松を植えたことに始まったといわれています。

 JR唐崎駅から東に向かい国道161号線を北に行き、右手の側道を入ると赤い鳥居が見え、その先には拝殿と豊かな水をたたえた琵琶湖が姿をあらわします。

   唐崎神社1

  唐崎神社2  唐崎神社3

 平安時代にはこの唐崎に地は天皇の災厄を祓う『七瀬祓所』のひとつとして重視され、また『枕草子』では湖畔の名勝として紹介されています。さらに室町時代に『近江八景』の中の『唐崎の夜雨』の舞台になっています。

  唐崎神社7  唐崎神社6

 境内に中ほどにある『唐崎の松』は現在三代目ですがその堂々たる姿には圧倒されます

   唐崎神社4

 そして松の根元には近江をこよなく愛した松尾芭蕉が詠んで歌碑が

   唐崎神社5
       唐崎の 松は花より 朧にて 

 また歌川広重の『唐崎の夜雨』の浮世絵にもこの老松が描かれています。

 古代から多くの歌人に愛された名勝 唐崎
 万葉集の中にも柿本人麿のこの歌があります。 

    さざ浪の志賀の唐崎さきくあれど大宮人の船待ちかねつ

 かつての景観は失われてしまったといわれる唐崎ですが、境内の真ん中でそびえ立つ松、雄大な琵琶湖、遠くに霞む山並み・・・広々とした草むらからの眺めはまだまだ捨てがたい風景でした。

日吉大社 ~ 比叡山・延暦寺の入口に鎮座する『山王さん』の総本宮 ~

 滋賀県大津市坂本にある 日吉大社 は全国約3800社ある日吉、日枝、山王神社の総本宮として知られる日本では最も古い神社のひとつです。平安遷都の際にはこの地が都の表鬼門であることから、都の魔除け・災難除けを祈る社、そして伝教大師が延暦寺を創建するとその鎮守社として崇敬されました。日吉大社の創祀は紀元前91年(崇神天皇7)といわれ、主祭神は二柱で東本宮には大山咋神、西本宮には大己貴神が祀られています。

 京阪坂本駅前から西に向かうと車の行きかう道路の中に鳥居が見え、モミジの植えられた歩道の両側には石積みの美しい風景が広がっています。この石積みは『穴太衆積み(あのうしゅうづみ)』と呼ばれ、この地に居住し寺院の土木営繕の御用を勤めていた『穴太衆』の石工技術といわれています。

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    日吉馬場と呼ばれる参道               『穴太衆積み』の石塀が並ぶ町並み

 日吉馬場とも呼ばれる石積みのある参道を進むと朱塗りの鳥居が見えてきます。

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    赤鳥居                           ライトアップされた赤鳥居

 日吉大社は貴重な文化財の宝庫として知られていますが、境内を流れる大宮川に架かる石橋もそのひとつ。大宮橋、走井橋、二宮橋の石橋は『日吉三橋』と呼ばれ、築造は豊臣秀吉といわれています。

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      大宮橋

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    走井橋                          二宮橋

 大宮橋を渡るとその先に神仏習合信仰を表す山王鳥居があります。古来より日吉といえば猿といわれ、魔除の象徴として扱われているお猿さん。境内には神馬舎と並んで神猿舎が 

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     山王鳥居                         神猿舎

 日吉と因縁の深い神猿(まさる)、西本宮の入口に建つ楼門の軒下の四隅では木像のお猿さんが屋根を支えながら参拝する人を見守ってくれています。

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    木像のお猿さんがいる西本宮楼門          軒下で屋根を支える木像のお猿さん 

 楼門を仰ぎながら中に入りと拝殿、その奥に『日吉造』という独特な形をした国宝の西本宮本殿があります。この西本宮の主祭神である大己貴神は、天智天皇が大津に都を遷都した際に奈良の三輪山から御神霊を迎えて国家鎮護の神として祀られたとのこと。

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      『日吉造』の西本宮本殿

 西本宮の東の門をでると宇佐宮、白山宮の社殿があり、その先に神輿収蔵所があります。この中には湖国三大祭のひとつ『山王祭』で使われる7基の神輿が展示されています。桃山時代から江戸時代に作られたという豪華な神輿を中心に様々な神事が行われる『山王祭』、この祭りで湖国の春が始まります。

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     宇佐宮                          白山宮

 さらに老樹に覆われた境内を進むと左手に二つ遥拝所が並んでいます。これは八王子山上の急斜面にある三宮宮と牛尾宮の遥拝所の社で、間にある参道を約1㎞登ったところに本殿が建っています。往復1時間に断念しましたが・・・

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     三宮宮遥拝所と牛尾宮遥拝所           八王子山上にある三宮宮と牛尾宮の社

 遥拝所から少し参道を進むと東本宮楼門があります。楼門を入るとすぐ左手に樹下宮、正面に東本殿が建っています。因みに東本殿のご祭神の大山咋神と樹下宮のご祭神の鴨玉依姫神はご夫婦。仲睦まじく同じ境内に社を構えたご夫婦にあやかるわけではないでしょうが、この境内には雌梛と雄梛の木があり、雌梛は男性が女性の幸せを雄梛が女性が男性の幸せを祈る木とされたいるそうです。

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     東本宮楼門                       東本宮と樹下宮

 広大な境内にはかつて108社といわれる多くの神々が祀られていた日吉大社。歴代の天皇・上皇の臨幸があり、室町期には仏教施設が林立し、神仏習合の山王社として最盛期を迎えたといいます。しかし、信長による焼き打ちで建造物はすべて灰燼に期してしまいましたが、豊臣秀吉、徳川家康によって再興されています。

 また日吉大社から300m南に行ったところに 日吉東照宮 があります。この東照宮は日光東照宮の雛形として造られたもので、関西の日光ともいわれています。

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      日吉東照宮

 日吉大社境内は関西屈指の紅葉の名所、来年の干支の申年には少し早かったのですが、祈願も兼ねての紅葉には少し遅かったことが残念でした。
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